アイカツ!二年目の楽曲が穏やかじゃない (『永遠の灯』 『オトナモード』)

TVアニメ/データカードダス アイカツ! POP ASSORTTVアニメ/データカードダス アイカツ! POP ASSORT
(2014/06/25)
STAR☆ANIS、りすこ from STAR☆ANIS 他

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 TVアニメ・データカードダス『アイカツ! -アイドルカツドウ!-』の楽曲は、主に田中秀和さんや石濱翔さんなどが所属する有限会社『MONACA』によって制作されていたのですが、DCDの2014年第5弾から新たに株式会社『onetrap』のクリエイターによる楽曲が加わりました。
 そのonetrap制作による曲の中でも『永遠の灯』、『オトナモード』がずば抜けて素晴らしかったので、どうしても書いておきたく。


◆永遠の灯
作詞:tom.m 作曲:南田健吾 編曲:Integral Clover
歌:れみ・ふうり from STAR☆ANIS  
(敬称略)


 まず踏まえておきたいのは、作中において、この曲は吸血鬼アイドル藤堂ユリカの持ち曲として扱われるということ。そして藤堂ユリカには既に『硝子ドール』という、ゴシックとヘヴィメタルをアイドルソングとして昇華させたとんでもないマスターピースがあり、続くこの曲はどうしても『硝子ドール』との比較を避けられないということです。

 『硝子ドール』はアイカツ!の楽曲のなかでもひときわ人気の高い曲です。メインユーザー層の女児たちに人気があるのはもちろん、所謂アイカツおじさんと呼称される成人以上のユーザーにも熱心なファンが存在します。
 『硝子ドール』が収録されたCD『Third Action!』がリリースされたのは2013年2月です。その『硝子ドール』のフルver.には約60秒間の間奏パートが含まれており、StratovariusやSonata Arcticaを彷彿とさせる掛け合いのカッコよさがすぐさま話題となり、twitter上でもヘヴィメタルやクサメロ系の音楽紹介botで取り上げられるようになりました。「この曲スゴくない? 女児向けアニメの曲なの?」というふうに興味を持ってアイカツ!にハマっていった人も非常に多かったと記憶しています。
 公式で公開されているビデオを確認すればわかりますが、『硝子ドール』の再生数だけ異常に多く、それだけでもこの曲が獲得した評価と求心力の高さがわかりますね。

 さて、そんな『硝子ドール』に続く藤堂ユリカの持ち曲を打ち出すにおいて、最も無難な選択肢は、『硝子ドール』での作家陣(作詞:こだまさおり、作編曲:帆足圭吾 敬称略)を再び起用し、同じ路線のゴスでヘヴィな曲を提供することだったと思うのですが、『永遠の灯』はアイカツ!楽曲への参加は初となるonetrapの作家陣による曲となっています。
 この選択ひとつとっても、如何にアイカツ!の音楽が高い志にもとづいて作られているか、ということがわかると思うのです。同じ方向性を繰り返せばファンを失うことはないでしょうが、あえてここで新しい挑戦を取り入れるという選択が、まさにアニメ本編でも語られているメッセージとも合致しています。

 そして、onetrap制作による『永遠の灯』は、『硝子ドール』に続く藤堂ユリカの曲として完璧なものに仕上がっていました。いろいろな面からそれを検証していきたいと思います。


■メロディと音色


 一度聴いてもらえばわかるのですが、『永遠の灯』には楽曲そのものを印象づけるメロディがあります。
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 鐘の音で奏でられるハーモニックマイナーなこのメロディは、イントロとサビ前とアウトロで繰り返し用いられています。
 フレーズそのものも、ゴシックな藤堂ユリカのキャラと合致していて素晴らしいのですが、注目すべきなのは音色(おんしょく)です。私見ですが、鐘の音でメロディを奏でるとどうしてものど自慢っぽくなり、あまりカッコよくならないのです。鐘の音で印象的にメロディを奏でることに成功した例といえばInstrumedleyのラストのHell's Kitchenが思い浮かびますが、逆に言うとそれ以外はちょっと思いつかない。
 しかし、ゴスロリな衣装でパフォーマンスする吸血鬼アイドルという藤堂ユリカのイメージを表現するにおいて、この音色の選択は完璧にハマっていると思います。
 『永遠の灯』はもちろん作曲の段階で素晴らしいのですが、最も貢献しているのはIntegral Cloverによる編曲の妙だと思うのです。


■Integral Cloverによる編曲

 Integral Cloverはonetrap所属の三人編成のクリエイターチーム。過去には水樹奈々さんの『Crescent Child』や、アイドルユニット:夢見るアドレセンスのシングル曲『マワルセカイ』などを手がけています。
 『永遠の灯』のゴシックな雰囲気は『硝子ドール』を踏襲したものですが、明らかにヘヴィメタルな音楽性ではなく、様々な音色で奏でられるフレーズが特徴的な四つ打ちの曲になっています。方向性として一番近いのはBuzyではないでしょうか。音色のプロデュースの巧みさ、アイドルソングでダークな歌詞を歌わせることの自然さなどが似通っていると思います。

 『永遠の灯』は徹頭徹尾「プロダクションの勝利」の曲と言えます。フルver.の二番ではなんとワブルベースが鳴り響きます。自分はEDM系に詳しくないのでよくわからないのですが、これは現行のEDMの中でもかなりエグい部類に入る音なのではないのでしょうか。
 そして間奏パートでは、チェンバロちっくな音色での簡潔なソロパートがあります。クラシカルなフレーズでピッチベンドが入る感じ、となればイェンス・ヨハンソンあたりの芸風を思い出す人も多いのでは。
 『硝子ドール』は楽曲そのものがネオクラシカルヘヴィメタル風でしたが、『永遠の灯』は「音楽性」そのものでその方向性に追従するのではなく、ジャンル音楽への深い理解に根ざした「音色」と「フレーズ」での再構築がなされているというのが最も素晴らしい点だと思います。


■ボーカル

『永遠の灯』には、

“Vocal Contracted by 市川洋介(onetrap)
 Directed & Organized by 小林健(onetrap)”

 というクレジットがあります。アルバム『Pop Assort』収録曲のなかで最もクレジット数が多いのがこの曲なのですが、それだけでも如何に「次回の藤堂ユリカ曲」が慎重に制作されたかというのが伝わってくるようです。
 その態勢は間違いなく曲にも反映されていて、ボーカル面で特に素晴らしいのは、サビ直前の「きみが望むなら」の「ら」からグリッサンド(なだらかに音程が変化する)で全音上がるパート。ここがほんと素晴らしい。

 音符的なことだけではなく、アニメソングであるからには声質に関するディレクションも細かくなされていたと思われますが、そちらもダークな世界観の歌詞に違和感なく馴染んでいて本当にすごい。前回の『硝子ドール』でボーカルを取っていたもえさんは既にSTAR☆ANISを脱退していて、今回メインボーカルを取るれみさんは藤堂ユリカ的な声質を再現しなくてはならない状態にあったわけですが、それが成されているのも細かいディレクションがあったからではないでしょうか。


■歌詞

 『永遠の灯』の歌詞は完全に『硝子ドール』を踏まえたものになっていて、続編だとすら言える内容になっています。
 『硝子ドール』がモラトリアムから抜け出せない堂々巡りな葛藤を歌っていたのに対し、『永遠の灯』はそんな主人公を外部から救おうとする側の視点になっています。イズムとしてはTears For Fearsとかに近いのではないでしょうか。
 とくに見事なのは、「鳥籠」「壊れた鍵」「風」といった『硝子ドール』に出てきた言葉が巧みに引用されていること。これは作詞の段階から細かい指定があったのか、あるいは作詞家のtom.mさんが『硝子ドール』のファンで詞の機微を理解できていたのか、どちらかはわかりませんが。とにかく前作の模倣ではなく、むしろアンサーソングと言えるような内容になっているのが本当にいい。

 ちなみに歌詞の「僕」は一ノ瀬かえでで、「君」がユリカ、「月がかけて風が止んだ夜」というのは神崎美月が抜けてTristarが解散したことを意味している、という説をネット上で見まして、すごくいいなぁと思ったのですが、やはり自分は「君」が吸血鬼アイドルになる前のユリカ、「僕」は彼女が愛するゴシックホラーの世界観を反映したキャラクターで、それらが同一の存在になることで藤堂ユリカというアイドルが完成した、という歌詞だととらえたいなぁと思っています。
 アニメ本編では89話『あこがれは永遠に』がユリカ回となるようですが、アイカツ!二年目からは楽曲の歌詞と本編の内容がリンクしたエピソードが非常に多いので、非常に楽しみですね。


■振り付け
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 データカードダスでもアニメ本編でも、この曲はキャラクターによってパフォーマンスされるわけですが、この振り付けの点でも『永遠の灯』は『硝子ドール』の対比の曲として作られています。
 それは一番最後のキメのポーズを見るだけで明白です。『硝子ドール』が目線を下げて両腕をおろすかたちのポーズだったのに対し、『永遠の灯』では両腕を高らかに掲げるポーズになっているのがわかります。わかりやすすぎるほどの対比ですが、曲だけではなくパフォーマンスにおいても細やかなディレクションがあったことがわかります。

 長々と書きましたが、曲を一度聴いてもらえばすぐに『永遠の灯』が「第二の藤堂ユリカ曲」として完璧すぎる出来になっていることがわかると思います。その裏にはonetrap製作陣による絶妙なプロデュースと、それを構築する細やかなディレクションがあったと思うのです。本当に素晴らしい。


◆オトナモード
作詞:林奈津実 作曲・編曲:成瀬裕介
歌:りすこ・もな  
  (敬称略)


 さて、もう一曲紹介します。
 アイカツ!楽曲の系譜として「背伸びしたがりな女の子」の心情を描くというものがあるのですが、『オトナモード』はその完成系と言える曲ではないでしょうか。
 この楽曲はアイカツ!二年目からの新キャラクター・夏樹みくるの持ち曲ですが、レゲエのリズムとおしゃれなメロディで奏でられる音楽性がみくるちゃんのキャラクター性に見事に合致しています。

 『オトナモード』を手がけたのはonetrap所属の成瀬裕介さん。
 『Trap of Love』や『fashion check!』のような歴代の楽曲の方向性を継承しながら、背伸びしたがりの女の子の心情を、巧みなコード進行と音色の構成で描くことに成功しています。
 まだCDには収録されておらず、フルバージョンは公開されていません。データカードダスの筐体でプレイするか、『アイカツ!公式ファンブック 2014 STAGE 5』付属のDVDか、アニメ本編84話で聴くことができます。


■コード進行・メロディ

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(耳がザコなので、コードが合ってるかどうかはわかりません
 「ここ違うだろ」というのがありましたらぜひご指摘ください)
 Bメロ後半からサビへのセクションはコード・メロディともに素晴らしすぎて悶絶モノです。とくに「踊ってたいの」の「たい」の素晴らしさといったらもう。
「わがままじゃなきゃね」のパートのやや不安定な感じのメロディも歌詞と合致していて本当に素晴らしい。
 ベースの八分のスタッカート感もえっちでいいですね。
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(こんな感じ? 合ってるかはわからない)
 あとイントロからAメロに入る直前に、一瞬ドリアンな感じのピアノのフレーズが入るのですが、これもいいんですよねぇ。
 要所要所できらびやかな音色のピアノのオブリが入るのも実に細かくていいですね。


■歌詞

 たとえば『Trap of Love』は、もう一段階上のオトナな自分になりたい、というあこがれの歌でしたが、『オトナモード』はそこから一歩踏み出してオトナになろうとする内容になっています。親御さん的にはひじょうに穏やかじゃない歌詞と言えるのでは。
「新しいワンピ 甘いリップ コーデもばっちりきまったし」とおしゃれに目覚め始めたおしゃまな心を描きつつ、「幼い自分はお先にオヤスミ」という不安定さ・幼さもあわせて描かれているのがね、もうね、ほんっとうにいいですね!
 もう僕はね、アイカツ!の楽曲とともに成長してゆく現代の女の子がうらやましくて、うらやましくて、どうしようもないですね。僕も『Trap of Love』とか『オトナモード』を聴きながら好きな人のことを思って眠れない夜を過ごしたりしたかった。
 したかった!


 というわけで、アイカツ!は二年目からもブレない、間違いない曲ばかりを提供してくれています。8曲収録のミニアルバム『Pop Assort』は改めてアイカツ!楽曲のよさを再確認できるとともに、onetrapの製作陣とともに成されている新しい試みも同時に味わうことができる、本当に素晴らしいアルバムになっています。
 ジョン・ウィリアムズばりのストリングスがギュインギュイン鳴る『ミトレジャーノ!』、ロック調の演奏がカッコいい『Sweet Sp!ce』などについても書きたいですが、それだと長過ぎるのでまた今度。

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2 Comments

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オトナモードのコード進行について少し違うかな?という部分があったんですが長くなったのでブログに書いてみました。失礼な書き方になってしまっていたら申し訳ありません。

しかし本当に二期の楽曲は素晴らしいですね。僕もこの二曲は特に大好きです。89話「あこがれは永遠に」は何度も観ました。

2016/02/04 (Thu) 10:40 | EDIT | REPLY |   

甘粕試金  

Re: タイトルなし

こんにちは。コメントありがとうございます。

おそらくそちらのコード進行が正しいと思います。
自分は耳コピにまったく自信がなかったので、訂正して頂ける方が現れてくれてほっとしました。

二期の曲はいいですよねえ。しかし三期の曲はさらに輪をかけてすごいことになってるので、近々こちらのブログでも書くことになると思います。チェックして頂けると嬉しいです。

2016/02/04 (Thu) 14:50 | REPLY |   

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